


遺言書を書くかどうかは、ご本人の自由です。
遺言書にはメリットもあれば、内容によってはデメリットが生じることもあります。
実際、遺言書が原因でトラブルになるケースもありますが、「書いておいた方が安心」というパターンも確実に存在します。
今回は、特に遺言書の作成を強くおすすめしたい2つのケースをご紹介します。 あてはまる方は、ぜひ作成を検討してみてください。
推定相続人が「配偶者+兄弟姉妹」のみの場合
しかも、遺産の大半が自宅不動産というケース
このパターンは、遺言書を作成しておくことを強く推奨します。
配偶者の生活を守るためにも、ほぼ必須と言ってよいケースです。
この場合、相続人は配偶者と兄弟姉妹になります。
民法の規定により、遺言書がない場合は、配偶者に75%、兄弟姉妹に25%の割合で遺産を分割します。
(兄弟姉妹が複数の場合は、25%を人数で配分)
遺産が現金中心ならまだしも、自宅不動産が大半を占める場合は要注意です。
A太さん(享年80歳)が亡くなり、
相続人
妻:X子(78歳)
兄:B太(83歳)
遺産
・預貯金(400万円)
・自宅不動産(評価額:3600万円)
合計 4000万円
民法の規定通りに75%と25%に分けると、
X子:3000万円
B太:1000万円

しかし、預貯金は400万円しかありません。
B太さんが「400万円でいいよ」と言ってくれれば丸く収まりますが、残り600万円を請求された場合、X子さんの選択肢は次の2択になります。
1.自分の老後資金から600万円を支払う
2.自宅不動産を売り払って、そのお金で600万円を払う
X子さんの老後資金が減少するか、
住み慣れた自宅を手放すか。
どちらにせよ、X子さんにとっては大きな負担です。
これを回避する最も簡単な方法が、A太さんが生前に遺言書を作成しておくことです。
A太さんが、自筆証書遺言でも公正証書遺言でもいいので、有効な形で「全財産を妻X子に相続させる」と遺しておくだけで、今回の例は回避することができます。
民法では、遺された人の生活を守るために、遺留分という規定を設けています。
遺言書が遺っていたとしても、遺留分を超える侵害があれば、侵害された額を請求できるという規定です。
遺留分は300万円なのに、
200万円しか相続できなかった
→100万円を他の相続人に請求できる
しかし、この遺留分は兄弟姉妹には認められていません。
つまり、妻X子に全財産を相続させる旨の遺言さえあれば、B太さんはを主張することができないため、自宅不動産も400万円の預貯金もすべてX子さんが手にすることができます。
または、
前妻との子の存在を家族に知らせていない場合
推定相続人が「配偶者+配偶者の子+前妻との子」の場合
しかも、前妻との子と面識がない、もしくは関係性が悪い
このケースも、遺言書がないとトラブルに発展しやすい典型例です。
夫太さん(享年80歳)がなくなり、
前妻:前美
前妻との子:前子
後妻:後美
後妻との子:後子
がいます。
この中で相続人になるのは、
前妻との子:前子
後妻:後美
後妻との子:後子
の3人です。前妻の前美は相続人にはなりません。
遺産相続の場合、まずは戸籍をたどり、相続人の調査をおこないます。
この相続人調査なしには、預貯金の払戻し等遺産の相続手続きはできません。
つまり、隠していたとしても前子の存在は必ず判明します。
相続を受ける正当な権利を持つ者が他にいないか確認できない限り、金融機関は預貯金の払戻しには応じません
以下、民法で定められた相続割合です。
後妻(後美):50%
後妻の子(後子):25%
前妻の子(前子):25%

この3者で遺産分割協議を行う必要があります。
しかし、後妻・後子と前子が面識ゼロというケースも多く、 葬儀で初めて顔を合わせることも珍しくありません。
•関係性が悪い
•そもそも交流がない
•住んでいる地域が遠い
といった事情が重なると、話し合いは難航しやすく、 “争族”に発展するリスクが非常に高いです。
協議がまとまらず、相続税の納付期限を過ぎてしまい、 延滞税が発生する可能性すらあります。
この場合も、夫太さんが生前に遺言書を作成しておくことで事態の悪化を最小限に抑えることができます。
遺言書で、遺産の割合を明確に記しておけば、遺産分割協議をする必要はありません。さらに、遺言執行者を指定しておけば相続人同士が直接やり取りする必要もなく、 手続きがスムーズに進みます。
親戚同士の関係が悪い場合にも有効です
1つ、注意しておくべきなのが、遺留分です。
配偶者はもちろん、子にも遺留分が認められています。
それは前妻の子であっても変わりません。
そのため、遺言内容を極端に偏らせると、 遺留分侵害額請求の火種になる可能性があります。
「どちらかの子に多く残したい」 という想いがある場合は、 生前贈与など、別の方法を検討するのも有効です。
・兄弟姉妹には遺留分は認められてない
・相続手続きには戸籍調査が必須
(認知した隠し子は必ず判明する)
・遺言書があれば、遺産分割協議をしなくて済む
冒頭でも述べましたが、遺言書の作成は自由です。
書くことでトラブルが起こることもあれば、書かないことで大きなトラブルを招くこともあります。
「自分の場合はどうしたらいいのか」
と迷われる方は、一度専門家に相談してみてください。
当事務所でも遺言書作成サポートを行っています。
そなえが安心につながるよう、丁寧にお手伝いさせていただきます。